結婚式を挙げてきました

結婚式を挙げてきた。
互いの家族だけの、簡素でこじんまりとした式。
ひねりもオリジナリティーもなく、式場任せのありきたりな結婚式。
だけど、一生忘れることのできない一日になった。


挙式をした11月7日は、日曜日で、かつ大安。
結婚式場も挙式の予定が一杯に入っているようだ。
朝一で式場入りしたのに、もうフロア全体がざわざわとした雰囲気だった。


花嫁は着替えやメイクに時間がかかるが、新郎側は着替えなんかすぐに終わるので、けっこうな待ち時間がある。
同じく、さっさと着替えが終わったモーニング姿のお義父さんと、ロビーのソファに座ってぼんやりと花嫁の登場を待った。

‥‥お義父さん、複雑そうな表情だ。

嫁は、自分で言うには「結婚願望が全然無かった」らしい。
一生独身を貫くつもりで人生設計をしていたのだ。
両親や弟にも、「私は一生この家にいるからね」って宣言していた。

なのに、まさかの電撃結婚だ。そりゃねーよ、という感じだわな。

ずっと一緒に居ると思っていたのに、ポッと現れた男に娘を持っていかれた両親の心中たるや、やはり、寂しいだろうなぁと思う。

‥‥申し訳ない、という気持ちもあるけど。

「だけど、きっと幸せにしますから」
的な言葉を言おうとするんだけれど、そういう方向の話になるたびに、お義父さんに「いやいやいや」的にはぐらかされた。

お義母さんの方は逆に、ただひたすらに「娘をよろしくね」って言ってくれてこちらが恐縮する感じ。
何もできない娘ですけれど‥と、へりくだる。
俺の母親も、俺の事を「ダメダメな息子ですけれど‥」とへりくだる。
母親とはそういうものかもしれないが、なんか傍で聞いているとダメダメ人間同士の結婚式みたいじゃないか。



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そうこうする間に、ウェディングドレス姿の花嫁登場。
うわ、なんだなんだ。綺麗なもんだなぁ。
普段はいつもスッピン顔だけど、濃い目のメイクも似合うんじゃないか。

やっぱり、結婚式の主役は花嫁だ。
一瞬で、控え室が華やかな空気になった。
パシャパシャとカメラのシャッター音。
くそ、俺もカメラ持ってくりゃ良かった。


嫁も、満更ではない様子。
照れ隠しなのか、「ブーケが重い」とこぼしていたけれど。



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挙式の一連のシークエンスは、式場任せでテキパキと進んでいく。
良く言えば「無駄が無く、洗練されている」。
悪く言えば「流れ作業」だ。

スタジオで集合写真、二人の記念写真を撮った後、挙式場所であるチャペルの前に誘導されて、そこでも写真撮影会。
「はい、ここで写真取ってくださーい」
って職員さんに言われるの。
で、みんなでパシャパシャって。



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「すごい、私たち芸能人みたい!」
嫁が言った。

まあ芸能人ではないが、少なくとも今日の主役ではあるだろう。
お姫様扱いだ。




撮影会が終われば、挙式のリハーサル。
入場から退場まで一通りのカタチを、
「はーい、そしたらここで花嫁の手をとってくださーい」
なんて風に係の人に言われるままにやってみる。
そして、リハーサル終えて再びチャペルの入り口まで戻ってきたら、

即。

「じゃ、本番いきますねー」
「!!!」


「○○○(俺の名前)、ダイジョブ?」
もう本番かよ、とおろおろしてたら、挙式を執り行ってくれる牧師さん(外国の人)に片言の日本語で話しかけられた。
大丈夫です、と答えると牧師さんはニッコリ笑って親指を立ててくれた。
この笑顔で、だいぶ緊張が取れたように思う。

ああ、そうだ。
ここでうろたえちゃいけないわ。

ステップがデタラメでも、身体の向きを変えるのが逆周りでも、かまうものか。
大切なのは、そんなことじゃない。


荘厳な音楽の中、お義父さんにエスコートされて、花嫁がバージンロードを歩いてくる。
こちらからも出迎えに歩み寄り、深々と一礼してお義父さんから花嫁を引き渡してもらう。

ウエディング・ステップでゆっくりと、ゆっくりと前へ。

二人で、神様の前に並んで立ってしまえば、もうこっちのもんだ。
あとは牧師さんの言うとおりにしていればなんとかなる。

賛美歌。
誓いの言葉。
指輪の交換。
祝福。
誓約書に署名。

あと、まあ、チューとか。


正式な教会ではなくて結婚式場のチャペルではあるし、「キリスト教の結婚式」ではなく「キリスト教式結婚式」だ。
それは「みりん」と「みりん風調味料」の違いみたいなものかもしれない。
嫁はカトリック系の女子校出身だから、キリスト教には慣れ親しんでるけれど、俺はキリスト教徒じゃないしな。


だけど、大切なことは、「誓うこと」。
ともに人生を歩むことを、お互いに心から誓った。
それでいい。
結婚の本質は、それだと思う。
あとはハクをつけるためのオマケだろ。多分。



挙式の後は、身内だけの披露宴。
ていうかお食事会か。

俺は「挙式終わったー、さぁメシだメシ」って思っていたんだけれど、ここでも花嫁の手をとってエスコートしながら入場、とかやらんとダメらしい。
披露宴も挙式の一部なのだなぁ。


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新婦側のお義父さんに最初の挨拶をしてもらい、披露宴スタート。

一応はかしこまった席とはいえ、挙式そのものに比べれば、所詮は「宴」なのでざっくばらんなものだ。
俺の家族と、新婦側の家族のみんなで談笑してもらおうというのが目的なのだから。

特に、俺の妹夫婦と、嫁の弟夫婦は初対面なのだが、気がつくと仲良く会話してくれていたので良かったと思う。



宴もたけなわになったところで、サプライズとして、ケーキカット。
これをやるってのは本当に皆には内緒にしていたので、ウケたウケた。


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二人でナイフ持って、一刀両断‥‥ってところでピタリと静止。
写真撮らなきゃいけないから!

でもってファーストバイト。
お互いの口にケーキを食わせるイチャイチャイベントだ。
(いや、由来とかは知ってるけどさ)

そうだよなぁ。ケーキカットやるってことはコレもやるんだったよなぁ。
そんな風習、忘れていたよ!!

誰よりも俺にとってサプライズだった‥‥。


ケーキカットに使ったケーキは、本来15人分くらいのもの。
それを9人の挙式で使ったもんだから、ケーキカットのあと厨房できちんと切り分けて出してもらったケーキのデカいことデカいこと。
なんだかもう、ケーキ食い放題!!って感じだった。

俺は頑張って二人分食べたけど!!(食いすぎ)



そしてもう一つのサプライズ。
花束贈呈。


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俺は片親なので、母親に。
嫁は、両親に。

はい、泣かせに入ってますよ。


なんでも、後から嫁が言うには、結婚前夜、両親に挨拶しようとしたら、父親は逃げ回ってきちんと挨拶を受けてくれなかったそうだ。
そして今朝、今度こそと、感謝の言葉を伝えようとしたら、またしても父親には逃げられたのだと。
なので、この花束贈呈で、ようやく父親に、今までの感謝の言葉を伝えることができたのだって。
さすがに義父さんも、こんな花束贈呈イベントやられちゃ逃げ場は無かったのだろうね。

それだけでも、この花束贈呈はやってよかった。

 
そして、親を泣かせたところで、シメの挨拶。
これは俺がやることになっていた。

これは、アドリブで挑んだ。
前もって挨拶の言葉を考えて、暗記、練習しておく、ってのをしていなかった。

前日まで仕事で、そんな時間無かったというのもあるが、
なによりも、義父さんの挨拶とスピーチの「ネタ」がダブってもいけないなぁと思ったからだ。

挨拶の「はなむけの言葉」に対しての、「返歌、返礼」としてのスピーチをしたかったから。
だから、アドリブでいこうと決めていたのだ。

まぁ、実際にはメシ食べながら、あるいはケーキカットしながら、頭の中で猛烈に考えに考えたんだけどさ。
食べたばかりのケーキ二つ分の糖分を一瞬で燃焼する勢いで脳みそをブン回したぜ。


そして、朗々と。
声を張り上げる。
伝えたいのは、自然に胸に湧き上がってきた想い。
想いを伝えるために、言葉を考え、組み立て、紡ぎあげる。
ああ、まどろっこしいなぁ。

でも、ここで決めなきゃ、何が新郎だ。

結婚に当たっての決意と、未来への抱負。
そして応援してくれた家族への感謝。

声も震えていたし、感極まって言葉につまったりもしたけれど、自分の言葉で、正直な気持ちを語ることができたと思う。

スピーチを終えて、拍手の中、嫁と二人で頭を深々と下げた。
そのとき、嫁が、手をキュッと握り締めてくれた。



結婚式、披露宴という「究極の非日常」が終わったら、あとは日常への帰還となる。
だけど、「元の日常」に戻るのではない。
俺の左手の先には、新しい家族がいる。

昨日までは恋人だった人が、妻となった。
今朝、俺と母親の二人で出かけた家に、三人で「帰って」きた。

不思議だ。

きっと、この不思議な気持ちは、あっという間に「当たり前」に変わるのだろう。
まだぎこちなくもドキドキの夫婦生活も、すぐに退屈な日常に変わるのかもしれない。

だけど、結婚式での「誓いの言葉」を口にした、あの時の気持ちだけは、何十年経とうが、忘れたくないなぁ。

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