爺ちゃんのアパート
ウチの前のアパートが、取り壊されている。
俺の爺さんが建てて、伯父が相続したアパートだ。
俺が高校2年の時に親が離婚してから、
数年間、俺の家族はこのアパートに住んでいた。
アパートではあるが、かつての「我が家」だ。
その「じいちゃんのアパート」が、売りに出されたのは、
伯父の側にもいろんな事情があるんだろう。
爺さんから「売るな」って遺言があったワケでもないんだから
別に伯父さん一家を責めるつもりもない。
でも、なぁ。
俺が物心ついたときから、爺ちゃんの家に遊びに来た時は
このアパートの階段で鬼ごっことかして遊んだよなぁ、とか
親が離婚して、このアパートに住む事になった時は
電気容量の少なさに困った(パソコンの電源入れるとブレーカー落ちた)とか
親の留守中にカノジョ連れ込んでイチャイチャしてたら
妹に見つかってギャー、とか
確かに、思い出は詰まってるけどさ。
まして、このアパートがピカピカの新築だった頃から見ている母の心中は、もっと複雑だろう。
文化財じゃあるまいし、永遠に昔のまま続いていくモノなんてないんだから
仕方ないんだけどな。
アパートが取り壊されたあとには、多分、住宅が何軒か建って、
そこに住んだ人たちがまた、色んな思い出を紡いでいくんだろう。
そして、もしも俺が将来、子供を儲けるような事があれば、
「ここら辺に昔、じいちゃんのアパートが建っていてなぁ」
なんて語ることもあるんだろう。
時代が移ろう、ってのはそういうことだ。
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